BBC版「ロミオとジュリエット」についての高橋康成 先生の談話です。(「シェイクスピア劇場」として昭和55年11月から放映開始されたシリーズの広報資料に収録されていたもの)
「ロミオとジュリエット」を見て
東京大学 高橋康也 教授(談)
シェイクスピアの作品は、舞台や映画の形で私たちの目に触れることが多いわけですが、こんどのBBC制作のシェイクスピアは、ちょうどその中間に位置するものと考えられます。
「ロミオとジュリエット」も、ゼフィレルリの映画に見たような、爆発的エネルギーや野性味で味つけした新解釈でなく、居間に置かれたテレビの画面の寸法にぴったりした、過不足のない
シェイクスピア、自然な姿のシェイクスピアになっています。
演出も正統的で、登場人物は、衣装こそ古い当時のものを身につけていますが、リアリティーがあり、現代そのもののような感じさえします。その理由の一つは、ジュリエット役に
十四歳の少女をあてたことにあるでしょう。舞台で見せるジュリエットは、その若さゆえの行動を、演技力で納得させなければならないのですが、テレビのジュリエットは、十四歳の年齢そのままのナチュラルな演技、稚ない感じそのままが説得力をもっています。テレビの画面を意識し、よく計算して作られている点が、BBC「ロミオとジュリエット」の大きな特徴であり、映画をテレビで放送するのとは違った強味になっていると思います。